ビアパレット

著者・訳者が教える、今だからできるビール書籍の使い方

新型コロナウイルスの影響で社会が一変し、仕事や生活の仕方も大きく変わりました。それはビール事業の仕方やビールの楽しみ方も同様ですが、そんなときだからこそ、書籍の読み方を深められる面があります。いくつかの書籍の執筆や翻訳に関わってきた長谷川さんに、その方法を教えてもらいます。

公開日:2020年6月26日
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本は読むタイミングや、自分が置かれている状況によって受け取り方が変わります。ビールの中でも特にクラフトビールは、世界中に面白さが広まり、楽しめる場も世界中となりましたが、今や新型コロナウイルス感染が地球規模で広まり、移動もままならなくなってしまいました。

しかしそんなときだからこそ、本にじっくりと向き合って、私たちが好きなビール、クラフトビールへの理解を深めることができます。私が最近携わった本を例に、書かれていることが今どのように生かせるかを示します。

『クラフトビール フォア ザ ピープル ブリュードッグ流あたらしいビールの教科書』

 (24873)

リチャード・テイラー、ジェームズ・ワット、マーティン・ディッキー著 
日本語版監修・翻訳 長谷川小二郎  
2019年ガイアブックス刊 税込定価:3,740円
https://www.amazon.co.jp/dp/4866540133/
2007年にスコットランドの漁村フレーザーバラで創業し、今や世界的なクラフトビールブランドに成長したブリュードッグの創業者・ジェームズとマーティン、そしてプロの書き手のリチャードによる、クラフトビールの魅力が詰まった本です。

冒頭では「クラフトビールとは何か」が、音楽・バンドを例に熱く語られます。音楽への道を志し、楽器の練習やライブ活動など地道な努力を重ねてついに成功する一方、空演奏をする「本物でない」人気バンドが例として出てきます。

ここで、ビールの世界でも当てはめて使える音楽業界の言葉として、「インディーズ」を取り上げたいと思います。この言葉は、聞いたことがあるでしょうけど、意味はと聞かれると、案外難しいかもしれません。英語のindependent(独立した)の口語表現のindieのことで、音楽業界で言えば大手の傘下に入っていない独立したミュージシャンやバンド、レコード会社・レーベルを指します。

クラフトビールも米国、日本をはじめとして「大手メーカーからは独立した経営をしていること」が定義として掲げられていますから、この音楽の例えは非常にふさわしいのです。そして大手かインディーズかが質の違いを示しているわけではなく、インディーズは「つくりたいようにつくる」態度が称賛に値することも共通しています。

こうしたクラフトビールの精神性が他にも綴られていて、それは6月9日公開の記事「コロナ禍に立ち向かう国内外のクラフトビール」でも取り上げた彼らの最近の義挙にもつながっています。

その他に今こそ使える内容が、料理のレシピです。「ビールと合せるための料理」と「ビールを使う料理」を10本ずつ合計20本載せていて、サラダからメイン級の肉料理、そしてスイーツまでと充実しています。例えばビールを使うフィッシュアンドチップスのレシピにのっとれば、衣を誰でも簡単にふわふわさくさくに仕上げることができます。


『今飲むべき最高のクラフトビール100』

 (24871)

マーク・メリ著、長谷川小二郎著・訳  
2019年シンコーミュージック・エンタテイメント刊 税込定価:1,870円
https://www.amazon.co.jp/dp/4401647718/
「マーク・メリ著、長谷川小二郎著・訳」というクレジットがちょっと不思議に見えるかもしれませんが、本文の4分の3をマークが英語で書いて私が和訳し、残り4分の1は私が日本語で書きおろしたので、このようになったのでした。なお、マークは関西大学文学部教授で専門は環境哲学、国内外のクラフトビールも研究分野の一つです。

この本のポイントは、国産だけではなく、輸入銘柄も含めて、日本で入手できる優れた銘柄を100本選んでいることです。また、規模、歴史などの面から上位の国際的ビール審査会でそれぞれの最高賞を獲得している銘柄も掲載しています。具体的な審査会は、米国のワールドビアカップ、英国のインターナショナルブルーイングアワーズ、オーストラリアンインターナショナルビアアワーズ、ドイツのヨーロピアンビアスター、日本のインターナショナルビアカップです。

受賞銘柄を入れることにより、より多くの人が美味しいと思う可能性が高まります。なぜなら、少なくとも上に挙げた審査会では、受賞までに複数の審査員が、出品者も読むコメントシートを記しつつ審査をしているからです。さまざまな視点や嗜好が加味されているということです。また、マークは関西、私は関東を拠点としていることもあり、載せるべき銘柄をお互いに挙げていく際に、地域のバランスが取れていったという利点もありました。

現在、飲食店でクラフトビールを飲むのがまだ控えられている面がある一方、通信販売を利用して自宅で飲む人が増えています。通信販売の短所として、どこかで味わってみてから注文することができないことが挙げられるかもしれません。まさにそうした場合に、この本を役立てていただきたいのです。我々が心の底から良いと思う銘柄と、審査会での受賞という客観性を持つ銘柄を組み合わせた顔ぶれがそろっていて、バランスの良さを評価してもらっています。

さらに、私が日本語で書きおろしたのは主に巻末の方の読み物で、そんなに長くはありませんが、他の本ではまず載っていない情報を詰め込みました。

「都市別 著者おすすめのビアどころ」では札幌、仙台、川崎、静岡、名古屋・松本、京都・大阪、北九州・福岡、熊本を8ページにわたって掲載しています。語り尽くされている東京や横浜はいっそのこと省略しました。

「日本の「クラフトビール」の歴史を振り返る」では、このテーマの基となる米国の歴史・事実を確認した上で、日本の歴史・事実を解説しています。すべて客観的な事実にのっとった、ある意味誰でも書ける内容ですが、日本では不思議と語られません。だからこそ今回載せたということでもあります。

ビアコラムでは、短いですが、事実ではない話が出回ってしまっている、IPAの歴史について触れています。参考文献を記しておきましたので(当たり前ですが)、興味を持った方はその文献に挑戦してみてください。2003年に英国で発行された本で、言語はもちろん英語です。


『コンプリート・ビア・コース 真のビア・ギークになるための12講』

 (24872)

ジョシュア・M・バーンステイン著 小嶋徹也訳
2019年楽工社刊 税込定価:7,150円
https://www.amazon.co.jp/dp/4903063887/
著者のバーステインは米国在住で、ビールに関するジャーナリストです。経歴は20年にわたり、これまでに著書は5冊執筆しており、そのうちで最も売れたのがこの本です。累計販売部数は10万部を超えており、ビールに関する英語での情報ニーズの強さを感じます。

訳者の小嶋「先生」は、日本地ビール協会(クラフトビア・アソシエーション)認定ビアジャッジ、ビアコーディネイターで、同協会のビアテイスターセミナー、ビアジャッジセミナーといった資格認定セミナーで講師や、『今飲むべき最高のクラフトビール100』のところでも挙げた名立たる審査会での審査員も務めています。そして国立東京工業高等専門学校・情報工学科の教授も務めているので、筆者や周りの人は「先生」と呼んでいます。

この本の最大の特徴で、最もページ数が割かれているのが、ビアスタイルです。ビアスタイルとはビール醸造様式と訳され、一言で言ってしまえば、ビールの分類方法です。ビールの分類は細かくやると150、その一歩手前のレベルでやっても100くらいになります。全部覚えることは不可能だし、その必要もありませんが、だいたいのことが分かると、実際に飲む前からビールの特徴が分かります。つまり先ほどと同様に、通信販売でビールを注文する際に役立つのです。

ビアスタイルに関して体系的かつ読み物として楽しめる本は、もはや伝説的ビアライターと呼ばれるマイケル・ジャクソン(2007年没)までさかのぼらなければならないでしょう。しかし例えば日本語版も出ている彼の著作は2000年前後で、情報がどうしても古い面があり、掲載銘柄も入手できなくなっていることが多い。そうした状況のなか、この『コンプリート・ビア・コース』は、体系的かつ読み物として楽しめるし、原書の発行が2013年ですが小嶋先生の工夫で日本で今飲める銘柄も加えられているので、情報の新しさという価値も持っているのです。

筆者はこの本では編集協力を務めました。


*今回取り上げた3冊の書籍は、長谷川さんから直接購入が可能です。
 購入ご希望の方は以下にメールにてご連絡ください。
 gammadigger(at)hotmail.com
 *(at)は@に置き換えてください。
筆者・長谷川小二郎からのお知らせ
今回取り上げた3冊の書籍の著者・訳者、つまりマーク・メリ教授、小嶋徹也教授、そして筆者の3人が、6/28(日)14時~16時に、オンライン講義「ビール本著者、訳者に学ぶ、コロナ禍を生き抜くビールの姿」で講義をします。

詳細は下記です。
プログラム
14:00-14:20 コロナ禍に立ち向かうクラフトビール(長谷川)

14:20-15:00 ビール審査の理想と現実(小嶋教授)

15:00-15:10 休憩

15:10-15:50 コロナで変わる伝統ビールとクラフトビール〜英国、チェコ、ドイツ(メリ教授)

15:50-16:00 質疑応答

各人が関わった書籍は、当日購入申し込みをすることができます。

【開催概要】
日時:6/28(日)14:00-16:00
配信プラットフォーム:Cisco Webex Meetings
参加費:6/26(金)までの入金は1500円、それ以降は2000円
※「クラフトビールをつくって、流通させて、売る」のどこかに従事している方の受講は無料です。
※開催URLは後日改めてご案内します。ソフト、アプリはなくても参加できますが、下記からインストールしておくとより円滑に参加できるかと思います。
https://www.webex.com/ja/downloads.html
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この記事のライター

長谷川小二郎

編集、執筆、英日翻訳。米WBC、GABF、豪AIBA、独EBS、日IBCなど国際的な上位ビール審査会で審査員。ビールと料理を合わせる「ベルギービールKAISEKI(会席)アドバイザー認定講座」「ビアコーディネイターセミナー」で講師。最新刊は共著・訳『今飲むべき最高のクラフトビール100』。

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