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≪東海岸からやってきたIPA界の黒船≫ニューイングランドスタイルIPAとは vol.1

近年、ビアラヴァーたちの間で囁かれる一つのキーワードがある。ニューイングランドスタイルIPA だ。どこかのビアバーでその樽がつながったという情報が流れれば、あっという間に人が動き、その日のうちには樽が空になる。出合えるだけで幸運なビール。果たしてその正体はどんなビールなのだろうか。(ビール王国 vol.16 より転載)

公開日:2017年11月20日
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濁った外観にトロピカルな香り。これまでに見たことのあるIPAとは全く異なる姿に、「本当にIPA?」と疑問が湧く。飲むとその疑問は吹っ飛び、「本当にビール?」と思うはずだ。

ニューイングランドスタイルIPA(以下、NES)は、IPAを嗜んできた人たちのほうが驚くビールだろう。

「まだ、正式に定まったスタイルではないのでいろいろな意見があると思いますが」と前置きした上で話してくれたのは、デビルクラフトの鈴木諒さん。

代表的なNESの特徴は、「滑らかなマウスフィール、マンゴーに代表されるトロピカルフルーツのような圧倒的なホップの香りと味わい、そして濁った外観」であり、「これまでのIPAのような強烈な苦味はなく、とろっとした甘い味わいは『ネクター』のようでもある」という。

醸造方法は、西海岸のIPAとは正反対とも言えるやり方だ。
「水、ホップ、酵母、麦芽の使い方は、これまでとはまるで違うもので、中には西海岸の醸造所の多くではこれまで行ってこなかった手法もあります」と鈴木さん。

例えば、一般的にドライホップを行う際には発酵初期の段階から入れることはない。発酵で生成される炭酸ガスと一緒にホップのアロマも抜けてしまうと考えられているからだ。

一方でNESでは、発酵によってホップの成分も変化し、より好ましい味わいになると考える。もちろん、西海岸の方法にアンチテーゼを唱えているというわけではない。造りたいビールの姿から逆算してレシピと手法を進化させているのだ。
ビール王国 (8322)

via ビール王国

<地図>地理上のニューイングランド地方は6つの州で構成される。現時点では、この地方で造られたビールのみがニューイングランドスタイルを名乗れるという決まりがあるわけでもない。

「酵母やホップが残っている状態のため、あまり流通向きのスタイルではありません。アメリカでも、小規模の醸造所で月に数回の即売会があり、あっという間に売り切れてしまうため一般にはほとんど出回りません」というNES。

フレッシュな味わいを楽しむスタイルだけに、醸造所も発売時に人が集まるように仕組みを作っている。

そもそもなぜこのような味わいのビールを造ろうと思ったのだろうか。NESの元祖とされるHeady Topperの影響が大きいとしながらも、「ブルワーだけが知っている、ドライ・ホッピング直後のビールのおいしさを再現したのではとも考えています」と鈴木さんは語ってくれた。


「ホップのアロマは濾過などの醸造工程を経ることでどうしても抜けていってしまい
ます。ドライ・ホッピング終了直後のビールから感じる、醸造中にしか味わえないホップの強い香り。そういったものを目指しているブルワリーもあると思います」

 まだまだ諸説あり、このスタイルが今後のビール業界へ与えるインパクトの大きさは予測できない。ただ一つ言えるのは、新たなビールの味を創り上げようとしている醸造家たちがいることだ。歴史の証人となる気持ちでニューワールドのビールを味わってほしい。
ビール王国 (8325)

via ビール王国

<写真①>ニューイングランドスタイルIPA(以下、NES)の元祖とも言われる「Heady Topper(The Alchemist 。バーモント州)」(写真右)。もともとThe Alchemist は、このビール1種類しか造っていなかったという。今でも少量生産でバーモント州の外に出ることはほとんどない。写真中央と左は、同じくNESの代表格とされるTree House Brewing Company(マサチューセッツ州)の「Doppelganger」と「Bright」。

ビール王国 (8327)

via ビール王国

<写真②>NES はその濁った外観が特徴的で、別名Hazy(=もやのかかった)IPA とも呼ばれる。酵母を濾過しないのもその理由だが、原材料にオーツ麦や小麦を使うことでより一層の濁りを出し、まろやかな口当たりを実現している。写真はTree House のビールで、その名も「Haze」。

ビール王国 vol.16 より転載  (取材・文:西林達磨)

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ビアパレット編集部

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