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ビールKAISEKI(会席) 2020梅雨・初夏編

5月に続き、「ビールと料理の合わせ方」の講師の長谷川小二郎さんに、実際に試した例を解説してもらいます。長谷川さんはさまざまな料理とビールを高度に組み合わせる「ビールKAISEKI(会席)」を提唱しており、特に和食との合わせ方に注力しています。旬の食材にも注目です。

公開日:2020年7月30日
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筆者は、ビールに関していくつかの活動をしていて、その中の一つに「ビールと料理の合わせ方の理論を追究し、そこから得られた法則を生かして創造的な組み合わせを提案する」ことがあります。具体的には、日本ベルギービール・プロフェッショナル協会(JBPA)主催「ベルギービールKAISEKI(会席)アドバイザー認定講座」のテキスト執筆・講師や、日本地ビール協会(クラフトビア・アソシエーション、CBA)主催「ビアコーディネイターセミナー」の講師の他、自主開催で合わせる会を開催してきました。最近では講座、会のオンライン化も果たしています。

SHIKI BEER「SOUR SAISON」と鮨

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埼玉県志木市にあるSHIKI BEERの「SOUR SAISON」で、酸味とセゾンらしい香辛料のような香りがあるという、名前の通りの銘柄です。セゾンとはベルギー南部発祥のビアスタイルで、苦かったり甘かったりフルーティーな香りがしたりと味わいの特徴は幅広いのですが、多かれ少なかれ香辛料が混じり合った複雑な香りがあります。この銘柄はそこにさらに、酸味が加わっているという面白さを持っています。

この銘柄と鮨を合わせると、甘酸っぱさが鮨めしと共通しているので違和感がなく、安心できる美味しさです。上に乗っているネタはもうなんでもいいかもしれません。また鮨にはまずワサビ、他にショウガなどを使うことが多く、これらもセゾンが持つ香辛料らしさと共通し、香りが高まり合います。それでいて辛味は強まることはなく、むしろ濃度が薄くなって弱まります。セゾンは鮨と基本的に良いのですが、この銘柄は酸味があるのでさらに共通した特徴があって、安心の美味しさが得られるというわけです。

ちなみに鮨のネタは、奥の列がマハタで、手前がキンメダイの炙りです。

オムニポロ「オストカーカ」と鮨

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また鮨です。今度はホッキガイ、ツブガイに、マグロの血合いでつくりました。血合いはとても安く、見た目の通り生臭いですが、まず塩を振ってしばらく置いておきます。これによって水分が出ていき、臭みが取れ、うま味が凝縮されます。同時にオリーブオイルで漬けておくのもおすすめです。

それでもまだ生臭さはあるので、ビールで消臭を狙います。今回はスウェーデンのブルワリー・オムニポロの「オストカーカ」を使います。この銘柄はアルコール度数0.3%のいわゆる「ノンアルコールビール」で、6月から他に3銘柄と一緒にIKEAでのみ発売され始めました。オストカーカはリンゴンベリーという果物を添えたチーズケーキの味わいを目指したそうです。リンゴンベリーはコケモモとも呼ばれ、その実はアセロラのような見た目で赤い。実際に飲んでみると、酸味を一番感じ、それを追い掛けてくるようにまろやかさと甘味があります。香りにはベリーらしいまろやかさがあります。

鮨と合せると、臭みを見事に消してくれます。マグロにはベリーなどの甘酸っぱいソースが非常に合うので、他の銘柄でもぜひやってみてください。ちなみにホッキガイ、ツブガイと合せると、それぞれの「らしい」香りも消えてしまって「やりすぎ」の感でした。

イサキの刺身と沼津クラフト「橘セゾン」

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イサキは5~7月に旬を迎えることもあり、そのころは「麦わらイサキ」「梅雨イサキ」とも呼ばれます。塩焼きが定番ですが、刺身や昆布締めもおすすめです。さらに、愛媛県ではエサにミカンから抽出した油を混ぜて養殖する「みかんイサキ」が開発されていて、刺身で食べるとほんのりとミカンの香りが感じられて大変美味しい。

つまり柑橘類を合わせると美味しいことが分かっている状態です。そこでひねりを加えるために選んだビールが、沼津クラフト「橘セゾン」。柑橘類(本当に橘です)と香辛料の味わいが共に強くあり、後味はさっぱり。苦味、甘味、穏やかな酸味のバランスに優れています。酸味は全体を引き締める効果ももたらしています。イサキと合せると橘と香辛料の香りが付け合わせのように乗って、味わいが素晴らしく足されました。

ハモの落としとオムニポロ「ブローベルスソッパ」

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再びオムニポロのほぼノンアルコールビールで、名前は「フローベルスソッパ」と言います。ブルーベリーとバニラを使用した甘酸っぱいビールで、こちらも酸味が最も強い。バニラは甘味を少し強調する程度に穏やかに使われています。ブルーベリーの味わいはしっかりあります。

これに合わせたのは、こちらも梅雨に旬を迎えるハモです。「落とし」という、ゆでと湯引きの中間くらいの程度で湯通しします。これに乗せる定番は梅肉(種を取り除いてすりつぶした梅干し)ですが、その代わりに塩(これも特殊な塩ですが、長くなるので、またこんど)を添えました。さらなる味わいはフローベルスソッパから足そうというわけです。

実際に合わせると、ビールの強い酸味は塩のカドを和らげつつ調和します。まさに「いい塩梅」。そしてそれが梅肉に代わる絶品のソースとしてハモの上に乗ります。ハモは今回、フライ、刺身でも食べてみましたが、この「ハモニポロ」が最も気に入りました。

筆者・長谷川小二郎さんからのお知らせ

本記事で取り上げたような、ビールと料理の合わせ方を理論と実践から総合的に学べる資格講座で、長谷川さんが講師を務める「ベルギービールKAISEKI(会席)アドバイザー認定講座」が、9月13日(日)にオンライン(Zoom)で開催されます。

この講座を受講すると例えば以下のことが分かるようになります。
・KAISEKI(会席)の意味を意識することで広がる組み合わせ
・ベルギービールの分類と、それぞれに合わせる料理の考え方
・そもそも人はどんなものを美味しいと捉えるか
・調味料、ハーブ、香辛料の基礎知識
・ベルギービールと特に和食の合わせ方
・ビールを調理に生かす四つの方法

今回取り上げた料理と講座内容に共通している点の一つは、和食です。和食とビールを合わせるのに「同じ食文化の中で長年愛され続けてきた」と言える組み合わせは、ほとんどありません。失敗する可能性もありますが、その分しっかり考えて、成功例を生み出す甲斐のある世界と言えます。

これらを理解した上で、ビールと料理の色や発祥国の一致を軽く超えた創造的な組み合わせを自分で考えていけるようになりましょう。お申し込みをお待ちしています。

オンライン開催でも、受講者にはビールと食べ物をお送りし、実際に合わせていただきます。6月に第1回のオンライン開催をして、対面での開催と変わらない好評を得ました。

講座名:ベルギービールKAISEKI(会席)アドバイザー認定講座
日時:2020年9月13日(日)10:30 – 17:30
配信方法:オンライン(Zoom)
受講資格:20歳以上の方。
※ご自宅で受講しづらい方、インターネット環境を整えていない方など、オンラインでの受講が難しい方は事務局までご相談ください。
※ベルギービール・プロフェッショナル ベーシック講座(旧ベルギービール・アドバイザー)を未受講の方は、後日ベルギービール・プロフェッショナル ベーシック講座を受講いただくことで資格認定となります。

詳細、お申し込みは下記ページから。
https://www.jbpa.jp/3227
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この記事のライター

長谷川小二郎

編集、執筆、英日翻訳。米WBC、GABF、豪AIBA、独EBS、日IBCなど国際的な上位ビール審査会で審査員。ビールと料理を合わせる「ベルギービールKAISEKI(会席)アドバイザー認定講座」「ビアコーディネイターセミナー」で講師。最新刊は共著・訳『今飲むべき最高のクラフトビール100』。

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