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4/1ビールの新定義の施行に合わせた「かつお節」のビールとは

4月1日からのビールの新定義の施行に合わせ、かつお節を使った「発泡酒」としてヤッホーブルーイングから以前発売された「SORRY UMAMI IPA(ソーリー ウマミ アイピーエー)」が新たに「ビール」として販売されます。新定義のあらましと、同銘柄の魅力に迫ります。

公開日:2018年4月3日
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今回改めて発売される銘柄「SORRY UMAMI IPA(ソーリー ウマミ アイピーエー)」は、実は2016年10月から数量限定で販売されたことがあります。もともとは米国市場向けに開発されましたが、要望が多かったため国内でも「発泡酒」として販売。そして来る4月1日に「ビール」として新たに発売されることになりました。
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最初の発売のときと比べると、変わっている点がいくつかあります。その中で最も大きなものが、税制上の扱いが「発泡酒」から「ビール」になることです。なぜそうなるのかと言えば、酒税法上のビールの定義が4月1日から変わるからです。

具体的にどのように変わるのでしょうか。まず、これまで税制上の「ビール」では使用が認められていなかった原料として、フルーツ、ハーブ・スパイス、野菜など計10項目が、「香り付けや味付けを目的とする『追加副原料』」として、麦芽の重量の5%まで使えるようになります。さらに麦芽使用比率の規定は67%以上から50%以上に下げられます。またドライホッピングというホップの香りを付ける製法も認められます。

従来のルールについてもっと踏み込んで言えば、今回拡大するような副原料を使いたければ、基本的に発泡酒の枠組みでつくるしかなかったのです。フルーツやハーブ・スパイスを用いたベルギービールのラベルに「ビール」ではなく「発泡酒」と印刷されているのを見たことがある人も多いでしょう。

また、これを読んでいる方々の多くは「『ビール』か『発泡酒』の表記にかかわらず、美味しいものを飲みたい」と思っているでしょう。筆者もそうです。しかし発泡酒は多くの副原料を使えることのほかに、もう一つ目的があります。麦芽比率に応じた税額です。ごく簡単に言えば、麦芽比率が低いと収めなければならない税金は少なく、麦芽比率が高ければ「ビール」と同じ税額が適用されます。つまり節税を目的につくられている発泡酒があり、むしろその「節税型」がこのジャンルの先駆けです。

「幅広い副原料」と「麦芽比率に応じて安くなる税額」という二つの特徴があることによって市場で何が起きたか。例えばベルギービールに敬意を表してフルーツやスパイスを用いた「発泡酒」をつくっても、取引先や消費者に「発泡酒なのになんで安くないの?」と思われて売りづらい場面が出てきたのです。そうした意識の差をなくして売りやすくすることも、今回の酒税法改正の目的の一つです。取引先や消費者が実際にどのように反応するかは、4月1日以降にならないと分かりませんが…。

大手メーカー各社も、4月以降に柑橘類やハーブを使った新商品を投入することを発表しています。そうしたなか、小規模ブルワリーで最も規模が大きいヤッホーブルーイングは、かつお節を使った銘柄として2016年10月に発売した「発泡酒」である「SORRY UMAMI IPA」を、今度は「ビール」として発売するのです。そう、今回の副原料の範囲の拡大には、かつお節も含まれているのです。

かつお節を使う目的は、出来上がった製品でうま味を感じてもらうことではありませんし、実際に感じられません。かつお節由来のうま味成分で酵母による発酵を活発にさせるのが目的です。2016年発売分で使った酵母はベルジャン酵母であり、その際うま味成分は、酵母による発酵を促進させてバナナやアンズのような香りの生成を活発にさせるために使われました。

今回新たに発売される分ではまず酵母をアメリカンエール酵母に変更。さらに発酵温度を低めにするなどの変更もしたところ、うまみ成分によりアルコールと二酸化炭素の生成が活発になって、甘味があまり残らずさっぱりとした飲み口になることが確認できたそうです。さらに、前回と比べると発酵由来のフルーティーな香りは少なく、相対的にホップのフルーティーさが際立っているとのことです。ですから、製品名にあるUMAMIは、味覚としてのうま味ではなく、うま味成分のことを指しています。ちなみに、うま味は1908年に味覚として日本で発見され、今世紀に入ってから世界中のいわゆる食通と呼ばれるような人たちにも認知され始め、英語でもそのまま音を取ってUmamiと呼ばれています。
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かつお節を使ったビールの存在は、筆者はヤッホーの銘柄以外、寡聞にして知りません。同社の井手直行社長は、「発泡酒として発売したときに大々的に展開した。国税庁の担当者に追加副原料について聞くと『過去にクラフトビールメーカーが使ったことがある原料を分かる範囲でリストアップした』とのことだったので、かつお節は我々が過去に使ったから今回の使用原料の緩和の対象になったと確信しています」と説明しています。
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今回の3月の発表会でテイスティングしたのは、以前「発泡酒」として発売したもの。「ビール」として表示するものは、4月1日以降でないと出せないわけです。表記以外の違いは、新たに「ビール」となる方は、追加副原料を増やした分、麦芽使用比率が少し下がり、アルコール度数が7%から0.5%下がって6.5%となります。

この差が味わいにどのような違いを生み出すのかは4月1日に以降にならないと分かりませんが、常に最高の味わいを追求するために、こうした変更を加えたとのこと。「発泡酒版」の味わいは、柑橘類やマンゴーなどのトロピカルフルーツなどの香りが豊かで、口に含むと甘味は強くなくむしろさっぱりとしていて、数字ほどアルコール度数を感じません。アルコール度数が少し低めですが、金色ということも相まって、ベルギービールのデュベルやデリリウムトレメンスに似た特徴を持っています。「ビール版」も味わうのが楽しみです。
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4月1日から始まるビールの新定義に合わせて投入するのが、かつお節――。パッケージに描かれている傾奇者であり、しかも後生に名を残す歌舞伎役者であるようです。なぜなら、まずきちんと型を身に付けていて、その上でそれを破る「型破り」になっているからです。かつお節を単に珍しい原料として採用して「型なし」になっているわけではなく、酵母が糖分を食べてアルコールと二酸化炭素を活発に生成させるために使っているのです。

井手社長は「2022年までに金額ベースのシェアで1%を取る」と目標に掲げています。いくつかのデータから推定するに、現在のシェアは半分の0.5%にも届いていないと思われます。4年後までに倍以上のシェアを取るのは簡単なことではないでしょう。しかし、「型破り」なヤッホーであれば成し遂げてしまうであろうとも思わせます。

製品情報(メーカー発表資料より)

●銘柄名:SORRY UMAMI IPA(ソーリー ウマミ アイピーエー)
●ビールの種類:Experimental White IPA(既存のスタイルに当てはまらない挑戦的で革新的なビール)
●原材料:大麦麦芽、小麦麦芽、ホップ、かつお節、コリアンダーシード、オレンジピール
●麦芽使用比率:96%以上
●アルコール度数:6.5%
●容量:350ml
●希望小売価格:288円(税込)
●発売日:2018年4月1日 公式通販サイト「よなよなの里」本店・楽天市場店
2018年4月5日 よなよなエール公式ビアレストラン「YONA YONA BEER WORKS」

●ヤッホーブルーイング公式サイト
http://www.yohobrewing.com/
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この記事のライター

長谷川小二郎

記者・編集者・英日翻訳者。2008年から、米国のWBC、豪州のAIBA、日本のIBCなど国際的なビール審査会を中心にビールの審査員。2014年から、ビールと料理のマリアージュのプロ「ビアコーディネイター」としてワークショップを60回以上開催。2018年からビアコーディネイターセミナー講師。

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