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ブリュードッグ流あたらしいビールの教科書『クラフトビール フォア ザ ピープル』の魅力とは⁉

ブリュードッグによる書籍『Craft Beer for the People』の日本語版が、2019年1月25日に発売されました。この公式発売日に先駆け、先行発売イベントが2019 年1月20日(日)にBrewDog Roppongiで開催されました。

公開日:2019年2月15日
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『クラフトビール フォア ザ ピープル』先行発売イベントが開催!

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世界で話題を呼んだパンクなビジネス書『ビジネス・フォー・パンクス』に続くブリュードッグによる書籍『Craft Beer for the People』の日本語版『クラフトビールフォアザピープル ブリュードッグ流 あたらしいビールの教科書』の先行発売イベントが行われ、日本語版監修・翻訳を行った長谷川小二郎氏とFar Yeast Brewing社長・山田司朗氏によるトークショーが開催されました。

Far Yeast Brewing 社長 山田司朗氏

Far Yeast Brewingの代表として、イギリスの同業者の書籍について話すのは珍しいことですが、クラフトビールの世界では、同業者のことは「競合」とは捉えず、「みんなでクラフトビールを広めていこう」というコミュニティ的な業界と思っています。

私は、会社を立ち上げる前に大学院で1年間イギリスに留学していました。その前にも2年間スペインにいました。当時のイギリスやヨーロッパのビール事情を実体験として経験していたので、この本を読む背景として、イギリスやヨーロッパのビール文化をご紹介したいと思います。
また、Far Yeast Brewingという小さな日本のブルワリーから見たブリュードッグは、アメリカ以外のブルワリーの中で一番成功を収めていると思っています。どんなところがすごいのかの印象をお話したいです。

私自身はブリュードッグ設立前の2005年から2006年にイギリスにいました。イギリスのビールといえば、「パブ」ですよね。「パブ」は伝統的には社交場として使われていたので数は多いし、朝から晩までやっています。その当時は、「クラフトビール」という単語を聞いたことない人が大半という時代で、専ら“ステラアルトワ”を飲んでいました。その時ギネスビールは伝統的には常温で出されるもので、冷やして飲みたいときは、「ギネス エクストラコールド」を頼まないと冷たいギネスが出てきませんでした。イギリスには“リアルエール”という文化があり、リアルエールは年配の人が飲むイメージのぬるいビールです。

イギリスのビールは、アメリカンクラフトとは世界観が異なり、ヨーロッパの中ではホッピーなスタイルが多いですが、モルトのふくよかなフレーバーを大事にするビールが多い気がします。

イギリスのビール文化を代表する近年のイベントといえばGBBF(グレートブリティッシュビアフェスティバル)。
初めての開催は1975年9月で毎年夏に開催される、伝統的なイベントです。もともとクラフトビールのイベントではなく、キャンペーンリアルエール(CAMRA)が主催するイベントで、商業的な大手ビール台頭により、伝統的なリアルエールがパブから押し出され気味だった際に、草の根運動レベルでビール愛好家が伝統を守っていこうと始まったものです。
私は、2013年にGBBFにいきましたが、それまではCAMRAが分かりませんでした。CAMRAはブリュードッグを初めとする新興ブルワリーと対立していました。今はブリュードッグでもカスクエールについて取り入れたり、和解しつつあるのではないかと思います。

イギリス・ヨーロッパは、もともと伝統的なビールと大手ビールが対立していました。ヨーロッパにはマイクロブルワリーがたくさんあります。ドイツには3000、イギリスは1000、ベルギーは200もあります。当然大手VS伝統的なビールという構造で、大手VS CAMRAです。伝統的なパブでもクラフトビールは置いていないこともあり、逆にクラフトビールメインのパブでは伝統的なイギリスのビールは置いていません。ちなみに、日本やアジアは大手のコントロールがすごく強く、クラフトビールが小規模なので対立にまでなっていないのが現状です。

ブリュードッグとFar Yeast Brewingは4年しか設立が違わないのに差がついています。規模的にはFar Yeast Brewingも成長していますが、そのペースはかないません。

イギリスのパブはブルワリーが資本をだしていることが多く、ブルワリー直営の店を出すのは普通です。ブリュードッグが75以上のオフィシャルバーを世界で展開していることはイギリスらしいこと。話題づくりもすごいですよ。ドッグハウス(犬小屋)という、アメリカにつくったブルワリーに併設したホテルを立ち上げました。また、「ブリュードッグエアライン」という、チャーター機によるツアーも話題になりました。彼らは、楽しみを提供する試みを積極的に行っています。クラフトビールもビール製造業が基本的な価値ではないのではないでしょうか。ビールを通じて楽しんでもらうとか、文化的に豊かになってもらうことが価値になります。ブリュードッグの挑戦を注目してみています。

最後になりますが、書籍のみどころ読みどころをお伝えします。
まずは、ビールの基本知識がしっかり書いてあります。一つのブルワリーが書いているものなので、「客観性がどうなのかな?」と思っていましたが、ベーシックなことが書いてあって、偏りなくビールについて学べます。レイアウトも綺麗で見やすく、読みやすい。ビールのレシピが公開されていているところも面白いです。本の後半にはビールに合うお料理のレシピ集が付いていて、とても興味深いです。アメリカの有名ブルワリーでは、ウェブサイトをみると自社ビールとのペアリングの推薦がついていることが多く、そうした点をブリュードッグもきっちり押さえていますね。他にも見所はあり、思った以上にしっかりした本です。

日本語版監修・翻訳を行った長谷川小二郎氏

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2007年にフレーザーバラに誕生したブリュードッグですが、今はエロンというまちにブルワリーを構えています。ブリュードッグは、ジェームズ・ワットとマーティン・ディッキーと犬1匹が立ち上げたブルワリーです。初年の2007年の年間醸造量は105キロリットル。日本の小規模ブルワリーの感覚からすれば決して小さくなく、始めるスケールの大きさが日本とは全然違います。2018年は従業員が1500人以上になりました。年間醸造量は7万4000キロリットル。日本のブルワリーではオリオンビールが一番近い規模ですね。

また、ブリュードッグのもう一つの特徴は「株主」が8万5000人以上いること。独自のクラウドファンディングを行っていて、出資者はエクイティーパンクスと呼ばれる「株主」です。東京にある「BrewDog Roppongi」は、長らくアジア唯一の店舗でしたが、現在、上海とクアラルンプールで出店計画中です。

今回発売する書籍は、ブリュードック書籍第二弾。第一弾である『ビジネス・フォー・パンクス』は、2016年に発売されました。美味しいビールのつくり方ではなく、ビジネスの仕方が載っています。僕が印象に残ったのは、新しいウェブマーケティングの話。SNSやブログなどをどう使うか、彼らは綿密に計算・計画した上で運用していて、専任スタッフも付けています。

今回発売した書籍のタイトル『クラフトビール フォア ザ ピープル』は、原題をそのままカタカナにしただけですが、サブタイトルとして「ブリュードック流あたらしいビールの教科書」を僕が付けました。この本は何の本なのか、補足する必要があると思ったからです。この本を読んでクラフトビールの面白さから始まり、つくり方、自家醸造の方法、ビアスタイルという便利な分類、ビールと料理の合わせ方が書いてあり、これを読むとひとまずビールの全体像がつかめ、さらに現在世界中で起きているクラフトビールのうねりも感じられると思ったので、「教科書」にしました。ちなみに英語版は2017年11月に発売、日本語版はその1年ちょっと後の2019年1月の発売となりました。

日本でビールの自家醸造をするには、厳しい条件があります。アルコール度数1%未満でつくらなければなりません。本の裏表紙にそのことに関して国税庁による説明を載せておきました。実行する際はよく読んでください。その自家醸造に関する章では、具体的に用いる器具などかなり細かく書かれているので、翻訳時には現役のブルワーにアドバイスをもらいました。
翻訳について今回工夫した点をいくつか説明します。ビールの特徴を述べるのに欠かせない言葉にaroma、taste、flavourがあります。カタカナでそのままアロマ、テイスト、フレーバーとされることも多いですが、人によって使い方が異なるように思います。一般的な訳語としては順番に「香り」「味」「味わい」でしょう。ここでそれぞれがどの感覚を使っているかを考えると、aromaは嗅覚、tasteは味覚、flavourは味覚と嗅覚両方になります。より正確にいうと、aromaはビールのグラスに鼻を近づけてかぐ香りです。だから口に含む前の話です。日本酒の用語では上立ち香です。tasteは口に含んでからする味。逆に言えば、口に含むことなしに味を得ることはできません。flavourは味と口に含んでからの香りで、後者は日本酒の用語では含み香、一般的には風味といいます。この3つの単語はカタカナで済まさず、すべて日本由来の言葉に直しました。

もう一つ重要な言葉は、drinkableという単語。「飲みやすい」と訳されることがありますが、ちょっと違います。カタカナにするだけでは意味が全然伝わらないと思います。「飲みやすい」としてしまうと、さらさらした水みたいなニュアンスも出てきてしまいますが、drinkableは、美味しくてついつい飲んでしまうという意味。私は以前は「杯が進む」という訳語を当ててきましたが、今回はよりふさわしいと思った北海道方言の「飲まさる」としました。「自分の意思とは関係なく、美味しくてついつい飲んでしまう」という意味です。drinkableの意味の核とかなり一致していますし、酒飲みの心持ちをよく表していると思います(笑)。

また、訳文全体の特徴としては、語り口調にしていることも挙げられます。ブリュードッグのSNSなどでの発信を見ると、若い人が語り掛けているような感じがいつもしていたので、そうしました。
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イベントに参加した方々は、入場時に提供されたBREWDOG PUNK IPAを飲みながら、興味深く耳を傾けていました。

『クラフト ビール フォア ザ ピープル ブリュードッグ流 あたらしいビールの教科書』

【書籍名】
『クラフト ビール フォア ザ ピープル ブリュードッグ流 あたらしいビールの教科書』
出版元:ガイアブックス
http://www.gaiajapan.co.jp/books/meal/4287/

【著 者】
リチャード・テイラー
ジェームズ・ワット & マーティン・ディッキー

【日本語版監修・翻訳】
長谷川小二郎
プロフィール
記者・編集者・英日翻訳者。2008年から、米国のWBC、豪州のAIBA、ドイツのEBS、日本のIBCなど国際的なビール審査会での審査員。2014年から、ビールと料理のマリアージュのプロ「ビアコーディネイター」(日本地ビール協会認定)としてワークショップを約80回開催。2018年からビアコーディネイターセミナー講師、日本ベルギービール・プロフェッショナル協会認定一般講師。

【本体価格】
3,400円(税込3,672円)

【発売日】
2019年1月25日(金)
240頁/B5変形(197×242mm)/上製/オールカラー
14 件

この記事のライター

ビアパレット編集部

ビアパレットの編集部アカウントです。様々な彩のある、 華やかな生活シーンを過ごす皆様に、色々なタイプ(カラー)があるビール情報をお届けします!編集部は日本ビール検定2級、ソムリエ、唎酒師など、お酒の資格を全員が持っています。

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